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  • ある私設秘書の物語

  • 投稿者:管理人
 
草笛さんの物語シリーズ

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sage

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  • 前科者ルンペン無一文無一物詐欺師ペテン師河野元成

  • 投稿者:河野元成詐欺師ヤクザの友人
  • 投稿日:2017年11月 1日(水)13時26分10秒
 
借金踏み倒しやめろ河野元成無一文

  • [4]
  • (無題)

  • 投稿者:たま
  • 投稿日:2017年 5月 4日(木)03時42分40秒
 
草笛様の物語シリーズを拝見しました。
スケールの大きさに圧倒されると同時に
相場の怖さをヒシヒシ感じました。
欲に目がくらむと正確な判断し難いのですね。。
貴重なお話をありがとうございます。

  • [2]
  • ある私設秘書の物語 前編

  • 投稿者:@楽
  • 投稿日:2013年 6月30日(日)23時00分33秒
 
ある私設秘書の物語 前編 投稿者:草笛

昭和62年秋、僕は足を骨折して手術のため1ヶ月半入院をしていた。
病室には、交通事故で骨折した人や、高圧電線の鉄塔のてっぺんから落ちて
木の枝に引っかかって奇跡的に一命を取りとめた人など、さまざまな人がいた。
僕のとなりのベットで寝ていたのは、40才ぐらいの男だった。名前をNと言った。
歳が近いので、よく世間話などをやっていたが、次第に身の上話になってきた。
「私の病気はヘルニアで、力仕事ができないんですよ。いまの職場は身体を使う仕事
 なので、退院しても仕事ができないかもしれないんですよ」
Nさんは淋しそうにいっていた。転職しようも、田舎では土建屋の土方の仕事くらいしか
なくヘルニアの彼はお先真っ暗だというのだ。40才を過ぎるとなかなか仕事がない、
田舎ではなおさら、仕事はないものである。
「そうですか。それじゃ、株でもやってみませんか?これから株は上がりますから
 株の売買で当面生活してはどうですか?」
「株なんてやったことないですよ。だいいち私は平凡なサラリーマンで、株式投資を
 するほどのお金がありません…」
僕は、退屈していたので、ここで、いつものラッキー7の法則という話をして上げた。
「100万円くらいなら、なんとかなりますか?」
「はぁー、100万円くらいなら、かきあつめればなんとか用意できますが…」
「100万円あれば、十分です。2倍になる銘柄を7回売買するだけで、1億円になりま
 す。1億円になったところで、8%の既発の社債を買えば年間手取り640万円
 月収50万円、どうですか、これで一生食えるんじゃないですか?」
「そんな、うまい話があるものでしょうか?」
「あるもないも、僕はこれまで連続して2倍になる銘柄を当てています。なかなか
 我慢が出来なくて、早めに売ってしまうことが多いですが、ちゃんと2倍になってから
 売っていれば、理論的に100万円は1億円になるんですよ。ははははは」

1ヶ月半が過ぎ、僕は先に退院した。病院で知り合う人は、普通では出会うことのない人
ばかりである。入院中は古くからの友人のように付き合うが、退院してしまうと
それぞれ元の世界に帰っていく。そしてお互い一生出会うことも、つきあうこともない。
たとえば、たまたま地元の組長が骨折して入院していた。背中一面龍の彫り物が見事だ
った。将棋の好きな組長で、僕は面会室で組長と将棋を指していた。いつも若い組員が
二人そばについていて、組長がたばこをくわえるとさっと火をつける。僕もたばこ好きだ
から、長考するときは、たばこをくわえる。そうすると僕にもたばこに火をつけてくれ
る。
組長の友人扱いだった。他の入院患者は恐がって、傍にこなかったが、僕はそういうこと
は平気な男だ。入院中は親しくしていて府中の刑務所の話などしてくれたが、退院してか
らは、一切僕の前には現れなかった。任侠道とかたぎのけじめをちゃんとつけていたのだ
ろう。僕が退院してから、僕の家に来た元入院者がふたりいた。ひとりは、暴走族のお兄
ちゃんで、いかにも暴走族らしい車に女の子を乗せてやってきた。中山美穂ファンで気が
あっていたのだ。僕に恋人をみせびらかしたかったようだ。「可愛い娘を連れているん
だね
」とお世辞を言ったが、中山美穂とは似ても似つかぬ田舎風のおねえちゃんだった。

次に来たのが、あのヘルニアのNさんだった。彼は晴れ晴れした顔で僕に挨拶した。
「やっと、退院できました。これからよろしくおねがいします」
「おめでとうございます。会社では身体の楽な部署に変われたんですか?」
「いえいえ、あなたの話に感動して、あなたについていくことに決めてきました」
僕は、嫌な予感がして聞き返した
「まさか、会社をやめたんじゃないでしょうね?」
「そうです。退院してすぐ会社には辞表を出しました。わたしはあなたの弟子になり
 1億円をこの手につかむ決心をしてここへ来たのです」
おいおい、マジかよ、と僕は慌てた。こちらは入院中の退屈しのぎに話していただけだ。
「それで、奥さんは賛成したの?奥さんも子供もいるはずでしたよね」
「家内に話したら、それは騙されているのだから、信じるなといわれました」
「そうでしょう、奥さんがそういうのももっともです、困った人だなぁ~」
数日後、Nさんの奥さんという人が血相を変えて我が家に怒鳴り込んできた。



Nさんの奥さんは丸顔で可愛い顔をしていた。しかし目を吊りあげ口をとんがらせて
僕に文句を言ってきた
「うちの主人に何を吹きこんだんですか!主人が夢のようなことを言って会社を辞めて
 しまったんです。私にろくに相談なしにですよ。うちには小さな子供もいるんです
 あなたは、うちの主人をどうしようというんですか!」
「そう言われても困ります。ご主人が会社を辞められたのは、ご主人の勝手であって、僕
 に文句を言われても筋違いですよ」
なんとか、奥さんを宥めすかして、帰らせた。奥さんが動転するのも無理はない。帰って
いく奥さんの後ろ姿を見ていると可哀想になった。変わり者の亭主を持つと女は苦労す
る。

Nさんは、僕の弟子を自称して中古の車に乗って毎日僕のもとにやってきた。追い返すの
も冷淡すぎるから、私設秘書として、お茶汲みや、運転手役をやってもらった。僕はまだ
30才台だったので、年上の人が弟子を自称するのが変だったが、Nさんは年下の僕に
先生、先生とよく仕えてくれた。給料なんか払う必要がなかった。弟子とはそうしたもの
だ。松江のクラブで連日飲んでいたが、松江までタクシー代が往復15000円くらい
かかっていたから、Nさんに運転をさせて飲みにいった。運転手付きで飲み歩くのは悪く
なかった。Nさんは男前で、歌もうまかったので、ウーロン茶を飲ませておいても
ホステスさんと楽しくやっていた。
「先生、人生がこんなに楽しいなんて、初めて知りました」
Nさんは、ホステスに囲まれて、うれしそうに僕に言った。地味なサラリーマン生活では
松江のクラブでは飲み歩けない。

Nさんはお茶汲みをしながら、僕がザラ場、株の売買をしているのをじっと聞いていて
自分も提灯をつけていた。僕が最初に買い始めるときを見計らって買いを入れていた。
100万円の元本は着実に増えているようだった。100万円の元本で家族を養い、資産
を築こうというのだから奇跡に近い生活だ。僕だって、たった100万円じゃない、大枚
200万円からスタートしたのだ!

ある日、Nさんは颯爽と新車に乗って現れた。
「どうしたんだい、その車は?」
「はい、先生に買っていただいたようなものです」
「そうか、それは良かったね。この頃奥さんはどう言ってるの?」
「いまでは家内もすっかり先生を信頼しています。一度前の非礼を詫びたいと言っていま
 す。そのうち詫びを入れに来させます」

ほどなく、Nさんの奥さんが、にこにこ顔で我が家に菓子折りを持ってやってきた。
「其の節は大変失礼なことを申し上げました。株で儲かるなんてことがこの世にあるなん
 て、信じられませんでした。でも現実に主人は儲けて、こうして暮らせております。
 先生に怒鳴り込んだことが恥ずかしい。今後もよろしくお願い致します」
これが同じ女性かと見間違えるほどの恵比寿顔だった。


Nさんに、どのくらい金が貯まったか聞いてみたことがある。3000万円以上になった
と彼は答えた。
「株はいいことばかりではないから、2000万円くらいは、銀行定期にして、残りの
 1000万円で株を続けなさい。それとそのくらいの運用資産になると
 信用取引きを勧められるだろうけど、Nさん、あなたは絶対信用取引きは禁止だよ。
 プロでもたいてい信用取引きでやられるんだ。あなたのような素人が信用取引きに
 手を出したら、一発でやられるよ」
「信用取引きは先生から最初からやるなときつく言われているのでやりません。でも
 銀行定期は勘弁です。先生の銘柄をやれば儲かることが分かっているのに、どうして
 年5%で銀行にあずけられますか!目標の1億円まで、このままやらせてもらいます」
儲かっているとき、金を引き上げることは実はできるものではない。もっと儲かる、
もっと儲けたい、そういう本能に突き動かされて、歯止めがきかなくなる。それが人間の
性である。僕は儲けた金の一部で、家を建て替えた。儲けた金は銀行定期にするか、
不動産にせよと株好きの古老から諭されていたからだ。

自称弟子、僕にとって無給で使える私設秘書Nさんは3年近くも僕のそばにいた。
やることがないときは黙々とチャートを書きこんでいた。当時まだパソコンのチャートの
ソフトがなくて、ローソク足を手書きでつけていたから、彼にやらせていた。
その間、取調室物語に書いたように、権力の弾圧にも遭遇した。Nさんは僕の共犯者
として、尾行監視され、僕が家宅捜査されたときは、街を歩いているところをパトカーに
つめこまれ警察署に連行されたそうだ。もちろん彼の家も家宅捜査を受けた。彼の奥さん
にも、またしても可哀想なことをした。

Nさんは鉄格子の取調室で「先生は神様だ、先生に足を向けて寝られない」とそればかり
言っていたようだ。最初は共犯者として取調べたが、お茶汲みと運転手とチャートの記入
しかしていなのだから、罪に問いようがない。そこで、僕に騙された被害者に仕立上げよ
うとしたようだか、「先生は私の神様だ、わたしは先生に救われた」の連発に刑事さんも
閉口して調書を取るのを諦めて家に帰したということだった。

僕のもとには、Nさんのような弟子入り希望者が何人もあった。商売をやめて弟子になり
たいとか、会社を辞めて、弟子になりたいと言ってくる人に、僕はきつく言った
「相場で生きるのは地獄の道です。商売や会社は、努力すれば、少しづつでもプラスに
 なっていきます。足し算の世界です。相場の世界は掛け算の世界です。1000万円
 儲けた次の瞬間、あっというまに1200万円損をしてしまうこともある。
 普通の神経では相場でメシを食っていくのは無理です。趣味でやっているくらいが
 一番良いのです」
弟子入り希望者は黙って帰っていった。Nさんの場合は先に会社に辞表を出してから弟子
入りしてきたので、追い払うわけにはいかなかった。彼が最初で最後の僕の弟子だった。


                 ある私設秘書の物語 前編 完



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  • ある私設秘書の物語 後編

  • 投稿者:@楽
  • 投稿日:2013年 6月30日(日)22時59分41秒
 
ある私設秘書の物語 後編 1 投稿者:草笛

私設秘書Nさんの幸せは長くは続かなかった。
そうなのだ、悪名たかきバブル崩壊の波が純真な彼を襲ったのである。
僕が平成2年3月に推奨したのが、東京2部の7758セコニックという会社だった。
日経平均は平成元年12月に天井を打っていたが、開けて平成2年のはじめも僕は
やる気まんまんだった。
これから10年以上も株価が下げ続けるなんて思っていた者はほとんどなかった。
996円で推奨したが、それまでのように株価が飛ぶこともなく、じりじり下がる一方
だった。3月に5分無償したあと、秋には600円台に下がってしまった。株式市場は
熱狂の時代に幕を下ろし、永い冬の時代を迎えようとしていた。

Nさんの顔色がすぐれないのに気がついた僕は、「3割の下げくらいで心配するな」と
彼を励ました。僕自身バブル崩壊で破滅的な時代が来るなんて思っていなかったから、
ナンピン買いで下げに対応していた。
しかしセコニックは下げ続けて、平成3年1月には500円も割り込んで455円と
推奨値の半値以下になってしまった。
Nさんが青ざめた顔でやってきて「私はもう終わりです、怖くて怖くて夜も眠れません」
と打ち明けた。
「どうして、そんなに怖がるの?セコニックは現物株だし、半値になったって、当初の
 100万円よりはるかに多い金が残ったでしょうが!!」僕は叱るような口調で諭し
た。
「実は、セコニックの株券を金融会社に預け、それを担保にしてまたセコニックを買って
 いたのです。その株券を担保にまた金を借りて、買い増しているうちに
 にっちもさっちもいかなくなったのです」
信用取引きを禁止していたのに、Nさんは信用取引きよりもっときつい投資法を編み出し
ていた。そんなやり方だと株価がちょっと下がれば、投資資金は加速度的に減る。
株価が半値になれば、確実にスッテンテンになる。
「どうして、そんな危険なことをやったんだ!そんな話聞いていなかったぞ」
僕は激怒した。
「先生の言われる銘柄は全部株価が倍になってきたんですよ。借金してでも買おうとい

 気になったんです。思いきって、大きく張ったら、こういうことになってしまって…」
「セコニックは意地でも1000円に戻して見せる。しかし、Nさん、あなたはもう
 終わった。すべて夢だったと諦めるしかない。あなたは僕との約束を破った。株券担保
 に借金して買う事は、信用取引とおなじことだ。金利が高い分、信用取引きより
 もっときついんだよ」
僕自身、株券担保にローン会社で借金して投資したことがあったが年利40%くらいを
払うと、手元に残る金はわずかだった。信用取引きよりきついことを身を持って体験して
いる。
結局、Nさんはすべてを清算して、残った金は僅か20万円ほどだった。生活費、新車に
使った金もあるので赤字というわけではないが、100万円の元本から億万長者になる
夢ははかなくついえ去ったのであった。


ある私設秘書の物語 後編 2 最終章 投稿者:草笛

Nさんはその後、ぷっつり我が家にこなくなった。
何ヶ月か経って、どうしているかと心配になって、彼の家を訪問すると、彼は思いがけず
満面に笑みを浮かべ、うれしそうな顔をして僕を迎えてくれた。
「先生、ようこそお出でくださいました。私は遂に先生を越えました。本を書き上げたの
 です。1冊100万円で売れる本です。この本を100冊売れば、1億円になりま
す。
 1万冊は売りたいな。100億円作って、世の中のために使いたいと思います」
Nさんは、1冊の本を差し出して僕に手渡した。確かに本の定価は100万円と印刷して
あった。ページをめくってみると、中は何も字が印刷されていなくて真っ白だった。
「この本は、表紙だけで、中には何も書いてないよ」僕は怪訝そうに尋ねた
「そこがミソですよ。読み手がこころで読むのです。読むたびに内容が変化してゆく画期
 的な本なのです。先生なら、この本の凄さが分かっていただけるでしょ!」
「確かに凄い本だね。かってこのような本を僕もみたことがない。こういう本を作ったの
 は世界でNさんが最初だと思うよ。でも、果たして、この本を100万円で買う人が
 いるのかなぁ。絶対に誰も買わないと思うよ。僕が保証する」
Nさんの顔の表情が急変した。

「先生を尊敬してきましたが、今日からもうあなたを先生と呼びたくなくなりました。
 私のこの画期的な本を評価できないなんて、あなたはタダの凡人だ!」
「Nさん、あなた変なことを言うね。僕が凡人なら、あなたは一体なんなの?」
株の教祖気取りだった僕はムッとして聞き返した。
「やっと聞いてくれましたね。私は日々精進して遂に悟りを開いたのです。私は空中に
 浮遊することもできる。壁があっても摺り抜けてまっすぐ進むことができるのです」
Nさんの顔をみつめたら、表情は厳しいが眼が笑っている。これはやばい、これ以上
話していても無駄だ。僕はほうほうのていでNさんの家から逃げかえった。

100万円を3000万円まで増やし、1億円ももうすぐ手に入るという境遇から
短期間であっと言うまに、文無しに転落してNさんは精神を病んでしまったようだ。
彼が真面目に語っていただけに、僕はの恐怖心は嫌が上にも募った。

彼が嵌ったのは3階建て投資法だった。これは禁断の果実だ。株価は上下に波動する。
無理な建て玉をしたものを嘲笑うかのように、株価は振るい落としをしつつ上がってい
く。
3買い建ては確実に破滅する。現物で自分の能力の範囲でやることが実は勝利への近道
だ。
7758セコニックはその後223円まで下がったが、なんと奇跡的にそのあと
1150円まで大暴騰した。僕はナンピンでコストを下げて、セコニックでも勝利した。
Nさんも僕の指導を守り、現物投資に徹していれば、3000万円を4000万円~
5000万円に増やすことができたのだ。無理さえしなければ、今も僕のとなりで
お茶を汲んだり、掲示板の管理人役でもやっていたかもしれない。
その後、Nさんとは会ったことがない。彼にはもう投資の話しはしようとは思わない。

                      ある私設秘書の物語 完