• [0]
  • チイママ物語

  • 投稿者:管理人
 
草笛さん物語シリーズ

投稿者
メール
題名
*内容 入力補助画像・ファイル<IMG>タグが利用可能です。(詳細)
URL
sage

  • [11]
  • チイママ物語 第1章

  • 投稿者:@楽
  • 投稿日:2013年 6月30日(日)23時18分26秒
 
休日モード スナックチイママ物語 第1章
   投稿者:草笛   投稿日:2013年 1月 5日(土)23時08分16秒

僕は2012年3月までは2日に1回の割合で我が家の東西両側にあるスナックに行ってカラオケを歌っていた。
だが、2012年4月から10月までの仕手株崩壊、株式市場の竜巻暴落でゼニを失って
スナック通いどころではなくなったことも、紛れもない事実だ。

それでも株式市場崩壊のさ中、
僕の自宅の両側に徒歩で行けるスナックには平均して交互に週1回は行っていた。

最近スナックに行かなくなったのには訳がある。ゼニが惜しくてスナック通いをやめた訳じゃない!
言うに言われぬ事情があったのだ。
休日なので、その話をじっくりと小一時間してみよう。地元の住人には知られたくないから
今夜から始まる、この物語は内緒にしておいて欲しい。
スナックだの、チイママだの、女の人生だの、それがどうした!株に関係ない話はやめろ!と思う人は読み飛ばしてください。

我が家の東側徒歩1分にはスナックがある。東京の秋葉風の格好をした女性陣が客を待つ。
このスナックは今の経営者になってから10数年経つ。きさくなママで客あしらいがうまかったから
僕はひいきにしていた。ところがママはあまり店に出なくなり、当時のチイママに店を任せるようになった。
このチイママになってから僕はあまり行かなかったが、4年くらい前に僕の家に2人の男が遊びにきたときに仕方なく行った。
友人の男2人を我が家で飲ませていたら、どこかスナックにでも連れて行ってくれよ、
と言うから、このスナックに連れて行った。3人でビールを飲んで
カラオケを歌い、客人をもてなす側なので僕が3人分の勘定を持った。

「計算してくれい~~」
「3万8千円です!!」
「おいおい、俺は通りすがりの旅の者ではないぜよ。すぐ近くに住んでいる地元の草笛だよ。
 草笛と知っていて、料金3万8千円か?」
「ええ、そうです。草笛さんは有名人ですから誰でも知っていますよ。
 もちろん私もよく知っていますよ」
「俺を草笛と知った上で3万8千円を請求するのか?それなら、分かったよ。払うよ」

このことがあってから、きっぱりと、このスナックには行かなかった。松江市のクラブじゃああるまいし
家の近くのスナックに下駄ばきで飲みに行って3人で3万8千円取られたんじゃあ不合理だと思ったのだ。
人付き合いでお金を使うことは惜しくはないが、不合理な価格のお金は払いたくない。

それから2年経って、2011年3月に東日本大震災が起きた。
地震の数日後の夜に用事があって、たまたま、このスナックの前を通りかかると、
スナックのママが立っていて「草笛さん、久しぶりに会えたわ。寄って行ってよ」
と僕の腕を掴んで離さない。

「こんな未曾有の大地震が起きたときに、スナックで飲んで歌っていたら不謹慎だろ。世間様に顔向けができないぜよ」
と断ると
「それは違うわ。世間が皆自粛したんじゃあ、景気が悪くなるでしょ。自粛は祖国日本のためにならんのよ
こういうときだからこそ、草笛さんが率先してお金を使ってお手本になるべきよ!!!」

ママは会話の面白い人だった。彼女の言うことにも一理あるなと感心しているうちにスナックに引きずりこまれた。

店の中はガランとしていた。大地震が起きて沢山の死者行方不明者が出ているときに、スナックに行って
飲んで騒ごうという客はさすがにいなかった。

店には以前のチイママの姿がなくて、新しいチイママになっていた。見た目、年齢は27歳~28歳だった。
この新しいチイママが愛嬌は良いは、歌はうまいは、田舎のスナックにはもったいないような可愛い女性だった。
客がいないから、この新顔のチイママがずっと隣りについてカラオケの相手をしてくれた。

とにかく、すごく楽しかった。
料金も5000円程度でこの店にしてはリーズナブルだった。
この日から、僕はまた、このスナックに通うようになった。
新しいチイママは次第に地元の人気者になって、
店の料金が高いにも関わらず彼女目当ての客でカウンターは満杯だった。

                               明日 日曜日の第2章につづく

  • [10]
  • チイママ物語 第2章

  • 投稿者:@楽
  • 投稿日:2013年 6月30日(日)23時17分1秒
 
休日モード チイママ物語 第2章
   投稿者:草笛   投稿日:2013年 1月 6日(日)13時35分36秒

我が家の西側徒歩2分の場所にもう一軒スナックがある。経営者は今のママで3代目だ。このママは
千葉県で主婦をやっていたのだが、離婚して島根県に帰ってきてスナックを始めたのである。
歳は50歳前後に見える。どういう人生を送ったのか興味があって、
このママをお好み屋に誘って一緒に飲み歩いた。
彼女には平凡な主婦業より今の暮らしが肌に合い、やりがいがあるように見えた。

我が家の西側のスナックは彼女が経営する3軒目の店だ。
隣町にスナックと居酒屋を持っていて、その勢いで僕の町に進出してきたのだ。彼女は商売上手で酒にも強い。
このママが僕に焼酎のボトルを一本プレゼントしてくれたので、タダで貰い物をするのは悪いから、
一晩で全部飲み干して、もう一本有料でキープした。
これにはママも意気に感じ、大いに盛り上がって僕と一緒になって麦焼酎を飲みまくっていた。

ほどなく、この西側のスナックのママに会いに行ったとき、別の女性から「草笛さん!」と声をかけられた。
振り向くと、僕の知り合いの男の奥さんだった。若見せのする女性で、歳を聞かなければ30歳前後に見える人だ。
彼女は飲みにきたのではなく、店のスタッフになっていた。

「どうして、この店に勤めることになったんだ?」
「家庭の事情で隣町のスナックに1年前から勤め始めたんですけど、今度、この店がオープンしたので
 ママの指令でこちらで働くことになったんです」

この奥さんは綺麗で色っぽい女性で、前からいい女だな、と思っていたが地元に住んでいる人の妻に対して
なれなれしくできないから、遠くから高嶺の花を見るようにしていた。

しかし、スナックに勤めたのなら、おおっぴらに話したり、一緒にカラオケを歌ったりできる。
これはラッキーだ。彼女はすぐにこのスナックのチイママとなり、店のスターになった。

僕は、チイママ目当てで、この店にも足しげく通うようになった。最初の3か月でボトルを10本キープしたくらいだ。
このチイママにもファンが出来て、カウンターは満杯になっていた。
僕が入店すると、チイママは僕をボックス席に案内し、そのあと彼女は僕につきっきりだった。
「他の客に悪いから、他の席の客にも挨拶に行けよ」と僕が接客法の能書きを垂れるほどだった。

この店は安い料金設定をしていたが、一人でボックス席を独占してチイママが付っきりだと
ボトルを入れる日は1万円程度かかった。ちなみに東側のスナックではボトルを入れる日は
1万数千円、一番高いときで1万9千円だった。スナックの料金とは言えないような料金だ。
僕は株で儲けてお金を持っていると思われていて、他の客より飲み代が高いのであった。
一人でスナックを2軒はしごすると一晩2万円かかっていたのだから、変な話だ。都会の大阪より高いだろう。
田舎のスナックはお客の数の少なさを、常連客から高い料金を取ることで採算を合わせる傾向がある。

                        来週土曜日の 第3章につづく

  • [9]
  • チイママ物語 第3章

  • 投稿者:@楽
  • 投稿日:2013年 6月30日(日)23時16分4秒
 
休日モード チイママ物語 第3章
   投稿者:草笛   投稿日:2013年 1月12日(土)17時53分24秒

2012年3月、我家の東側の秋葉風スナックでチイママと出会ってから一周年になった。
それは東日本大震災発生一周年でもあった。

一周年を記念してチイママをドライブに誘った。このチイママを以後、便宜的に「東のチイママ」と呼ぶことにする。
某所で落ち合い彼女の車に乗せてもらって、小一時間かかる場所にある海鮮レストランへ行った。
東のチイママという運転手つきなので僕は気楽に酒を飲みながら料理を食べた。
二人の話題と言えばスナックのことになる。

「わたしね、今、スナック勤めに悩んでいるのよ」
「そうかい、そうは見えないよ。楽しそうにやっているじゃないか」
「わたし、ママ代理と意見が合わないのよ。うちの店は料金が高いでしょ。お客様と顔なじみになると
 高い料金を請求するのがつらいのよ。ママ代理は取れる客からはしっかり取るべし、と言う方針なのよね・・・」
「君の店の料金が高いことは有名だわな。君もチイママとして、店の方針とお客との板挟みになって大変だね」

思い出して見ると、僕も大人数で行くときは彼女に無理を言っていた。
僕はチイママの売上を増やしてあげるために、知り合いを誘っては東のスナックに飲みに行っていた。4~5人とかで行くときは
最初から一人4000円~5000円で総計2万円でやってくれ、とチイママに頼んでいた。先に言っておかないと5万円は取られるからね。

スナックの隣のホテルのビアガーデンで僕が飲んでいたら、20歳代~30歳代の町の若者が10人くらいでビールを飲んでいた。
若い男は元気が良くて気持ちがいい。彼らが僕に気づき「草笛さん、草笛さん」と慕ってくるから、酔って気分が大きくなっていた僕は
「お前たち、まとめて二次会に連れて行ってやるよ。飲んでカラオケを好きなだけ歌えよ」と言った。若者たちはヤッターと盛り上がった。
チイママに携帯電話を入れて、10人分の席を空けておくよう言った。若い衆は店に座るとはしゃいだ。
「この店は料金が高いので、僕たちの小遣いでは入りたくても入れないんですよ。草笛さん、ごっつあんです!」と大喜びだった。

チイママを店の隅に呼んで
「10人も連れてきたから、一人3000円で飲み放題、歌い放題でやってくれい」
と言うと
「この店は一人3000円は無理です。そんな料金をOKしたら私がママからあとで叱られるわ」
と困った顔をした。
「売り上げがないより、あったほうが商売は儲かるんだぜよ。もうみんな飲んで歌っているんだ。俺は3万円しか払わないよ」
「う~~ん、私を困らすのね。わかったわ。それでいいわ。でも今度、草笛さんが一人で来たときに、しっかり、いただくからね」

こちらはお客を連れて行って、売上増加に協力しているつもりだった。本来はチイママの手柄のはずだ。
だが逆にチイママは店の経営者側から叱られる羽目になっていた。
店はママの義理の娘がママ代理になって仕切っていて、会計はママ代理がやっていたのだ。

このママ代理は25歳くらいでチイママより歳が若かった。
チイママが人気があって、客がチイママばかりをチヤホヤすることが面白くない気持ちもあったのだろう。
なにかにつけてチイママにつらく当たっていたのかもしれない。

スナックのママにとって、店のチイママやヘルプさんが人気があることは
経営上はありがたいが、女の嫉妬心から本能的、感情的にママよりもてるチイママはうとましいものだ。そういうケースを僕は過去何度か見てきた。
たいてい売れっこのチイママの方が店をやめてゆくことになる。

海鮮レストランの窓からは美しい日本海が見渡せて、赤い夕陽が眩しかった。
こういう店に東のチイママとドライブがてら来れて、良い思い出が出来たなと僕は満足していた。
チイママは食事を終えて、食後のケーキを食べながら、こう切り出してきた。

「草笛さん、私、自分がママになって、自分の思い通りのスナックをやってみたいの・・・」
「それはいい考えだね。可愛い君がママになって、料金も低額にすればお客が殺到して大儲けだぜよ」
「賛同してくれるのね、うれしいわ。ねえ、草笛さん、私の力になってくれるわね」
「いいよ、俺の知り合いが、空き家になっているスナックを所有しているから、俺が借りてやるよ。そこでやれよ」
「ああ~~あの小さなスナックね。あのスナックは狭いから、私のイメージとは合わないわ。もっと広い店がいいわ!」

この頃はまだ2012年竜巻暴落が起きていなかったので、僕は気が大きくなっていた。
だが、広いスペースのスナックの空き家は町内にはなかった。県都松江市に広いスペースの店を借りるとなると
賃貸料も破格に高い。そこまでのことをやるほど、僕はチイママと親しい関係ではない。
「広いスペースの店なんて、すぐに思い当たる物件がないな~~~~まあ、考えておくよ」
と僕は言葉を濁した。

                          明日 日曜日夜のチイママ物語 第4章につづく



  • [8]
  • チイママ物語 第4章

  • 投稿者:@楽
  • 投稿日:2013年 6月30日(日)23時14分53秒
 
休日モード チイママ物語 第4章
   投稿者:草笛   投稿日:2013年 1月13日(日)18時12分11秒

西にあるスナックのチイママの夫はハンサムでやさしい男だ。
歳は40歳台前半、普段は温厚で怒ったところを見たことがない。
彼は自営業をやっており建設関係の資材を扱っていたが、長引く平成デフレ不況で売上が減少し辛酸を舐めていた。
努力しても努力しても、デフレ不況の波には抗えない。時代の大波は個人の力ではどうしようもない場合もあるものだ。

大手企業でさえも倒産の瀬戸際に追い詰められたくらいだから、どれだけ多くの零細自営業者がデフレ不況で泣いたことか。
チイママのスナック勤めも、本来、好きで始めたわけではなかった。
経営不振で苦しむ夫を助け、少しでも家計の足しにしようという、けなげな動機からだった。

彼女は水商売の経験がなかったから、知らないオジさんたちに調子を合わせて対応するのは不得意だった。
だから前から知り合いだった僕が来店したとき、安心感から僕につきっきりになって、そばに居ついていたのだった。
このママを便宜上、西のチイママと呼ぶことにする。

西のチイママはスタイルが良く、きゃしゃな身体なのに胸のふくらみもあった。何よりも足が細くスラリを伸びていた。
張り切って、下着が見えそうなミニスカート姿で店に出ていた。素人主婦なのだがお色気ムンムンだった。
彼女の綺麗さと色気は、山陰オフ会三次会でじかに会ったことのある株研戦士暴騰くんの保証書つきだ。

ある日のこと、西のチイママが誕生日の話をし出した。

「草笛さん、○月○日は、私の誕生日なの・・・・・」
「そうかい、じゃあ、誕生日祝いをやってやろうか」
「うれしいわ。わたしね、焼き肉が大好きなの。美味しい店を知っていたら、連れて行って!」
「そいじゃあ出雲市で一番うまい店に連れていってやるよ、そのあと君の社会勉強になるから他のスナックで一緒に飲もう」
「わたし、他のスナックにも行ってみたかったの。楽しみだわ」

その当日、焼き肉屋で大いに食べて、僕は酒を飲んだ。このときも某所で待ち合わせて、彼女の車に乗った。
そのほうが目立たないのだ。狭い世間の田舎では人の目がうるさいのだ。

僕がカルビやレバーを箸でつまんで鉄の網に乗せていると、西のチイママが僕をたしなめた。
「あのね、生の肉をつまむときわね、箸の反対側でやるものよ。食べる時には普通に箸を使うのよ」
「へえ~~、知らんかったな~~。確かにその方が衛生的だわな。君は偉い!」
僕は長らく生きてきて、たいていのことは知っているつもりだったが、チイママに一本取られた。

腹がいっぱいになったところで、昔よく通っていたスナックに二人で行った。
ママが「草笛さん、ひさしぶりね」とソファー席に案内し、ママ自身とヘルプさんも隣についてくれた。
西のチイママと二人でデュエットを歌いまくった。愛が生まれた日、カナダからの手紙などなど。
誰でも知っている歌がスナックでは他の客に受ける。
歌の合間にママが僕にこっそり聞いた。

「今日のお連れさんは、どこの女の人なの?」
「単なる家庭の主婦だよ。俺の議員時代の後援会婦人部の中の一人だわさ」
「綺麗な人ね。家庭の主婦のままじゃあ、もったいないわ」
「ママのメガネにかなったかい?この店に勤めたら売れっ子になるかな?」
「うちの店に是非、欲しいわ。草笛さんから彼女に聞いてみて」
「思い出せば、前にも、僕の後援会の主婦と一緒に来たときに同じことを言ったことがあるよな」
「草笛さんが連れて来る女の人はいつもいい女だもんね。この店に勤めてほしくなるのよ」

ママとの会話を切り上げて、西のチイママに、やらせ、で聞いてみた。

「ママが君を主婦専業ではもったいないからスカウトしたいと言っているけど、どうする?」
「そう言われても・・・・・・」

僕とチイママは目を合わせて、含み笑いをした。

西のチイママの店は料金が比較的安いこともあって、週に何回も熱心に通った。
店から家まで数分歩いたら、すぐに帰宅できるから閉店時間の深夜12時過ぎまでチイママと歌っていた。
特に金曜日の夜は「金曜決戦勝利祝い」と称して遅くまで西のチイママと歌いまくっていた。
ある日の土曜日、株式相場がないので、朝から友人の家にお茶を飲みに行った。

「草笛君、二日酔い気味だね。昨夜もスナック通いかや?」

「当り!深夜まで飲んだよ。まるで、ついさっきまでスナックのチイママと一緒に居た気分だよ。
 このチイママがいい女でね、すごく色っぽくて、ミニスカート姿で隣に座られると、わくわくするぜよ!」

「おいおい、草笛君だけ楽しまずに、俺も誘って連れていけよ!」

「おう、次行くときには、お前を誘うよ。西のチイママの色っぽさ、歌のうまさにお前も
 メロメロになるはずだぜよ。でも、俺のお気に入りのチイママだから手出しはするなよ」

チイママの話で大いに盛り上がっていたら、ガラリとドアを開けて、客人が入ってきた。
顔を見たら、なんということだ!当の西のチイママの亭主がやってきたのだった。

「あれ、草笛さんも来ていたんですかぁ!」
「おお、まっこと、久しぶりだね、その後、商売の方はどうしたのかい?」
「商売は諦めて清算しました。店仕舞いです。同業だった会社に勤めて一営業マンとして人生出直ですワ。
 自営でリスク取って商売やっているより、給料取りの方が気が楽ですたい。はははは・・・・・」
「そうかもしれないね、君は人当たりが良いから、営業マンとして働いても、きっとうまく行くさ」

チイママの夫が突然やってきたので、スナックの話はヤバイからピタリとやめた。
友人も気配を察して、話題を変えた。チイママの亭主にしてみれば、自分の妻のことが他の男たちから
色っぽいだの、いい女だの、話題のネタになることは、プライドが傷つき耐えられないことだろう。

この家の友人は煙草嫌いで室内は禁煙だった。一方、僕もチイママの夫もタバコ好きだ。
チイママの夫が僕に向かって言った。

「草笛さん、この部屋は禁煙だ。タバコを吸いに一寸、外に出ましょうか?」

外に出て、チイママの夫と、お互いがどことなく、ぎこちない気持ちでタバコを吸っていた。
一本吸い終わると、チイママの夫がやおら切り出した

「俺の嫁さんが、草笛さんに気に入られ、えらくお世話になっているようですね・・・」

                           明日月曜日夜の 第5章につづく

  • [7]
  • チイママ物語 第5章

  • 投稿者:@楽
  • 投稿日:2013年 6月30日(日)23時13分52秒
 
休日モード チイママ物語 第5章
   投稿者:草笛   投稿日:2013年 1月14日(月)16時44分18秒

西のチイママの夫から「外でタバコ吸いましょう」と言われたとき「表に出ろ」と言われた気がした。
彼の妻であるチイママにゾッコンになっていることに対して
何か文句を言われるのだろうな、と、僕はタバコを吸いながら身構えていた。
チイママの夫は、しかし、意外なことを言った。

「草笛さんにひいきにしてもらって、嫁が助かっています。
 俺からもお礼を言います。今後も嫁のこと、よろしくお願いします」

西のチイママの夫は性格が温厚で真面目な性格であった。
「おい、草笛さん!あんた、いい歳して、何やってんだよ!」と嫌味の一つも言われるかと思っていたので
拍子抜けしつつも、ほっと胸をなでおろした。

実際、僕は彼女が内助の功で夫を助けるためにスナック勤めをやり出した点に
感じるところがあって、彼女を支えてやろうと思ったことも事実なのだが。

それにしても、亭主に俺の嫁をよろしく、と言われてチイママの店に通うのもなんか変だな、
全然ドラマチックな展開ではないな、これでは物語にならんわな、と感じた。

東のチイママの誕生日が近づいた。西のチイママと誕生日祝いをやったからには、東のチイママの
誕生日も祝ってあげないとバランスが取れない。人の道からそれることになる。

「誕生日祝いをやってやろうか?」
「うれしいわ。じゃあ、わたしに誕生日のプレゼントを頂戴!」
「いいよ、何が欲しいんだ?」
「わたし、花束が欲しいわ。バラの花束をお願いね。バラの花束を一度もらってみたかったの」
「そうか、そうか、花束くらいのことならお安い御用だぜよ」

翌日、さっそく、僕の町のショッピングセンターの花売り場に行ってみた。
田舎の町の花売り場のこととて、菊の花、百合の花、など仏壇や墓に飾る花しかなかった。
「これで我慢せいよ」と菊と百合の花束をスナックに持って行ってカウンターに飾ったら、
きっと、東のチイママは「私の葬式のつもりなの!!」と可愛い顔を鬼のようにして怒るだろう。

仕方なく、町外へ遠出して花の専門店を探した。バラの花が置いてある店があった。
深紅のバラの花が一本300円だった。へえ~~バラの花って案外高いものなんだなあ、と勉強になった。
「百万本のバラの花を あなたにあげる」と加藤登紀子が歌っていたが、300円×100万本=3億円かあ~~
低迷する2部、ジャスダック上場株なら、会社まるごと買えるほどだわな、と思わず株に換算してしまった。

東のチイママを驚かすために、100万本には至らないが100本くらいバラの花を贈ろうかな?
いや100本で3万円だ。枯れてしまう花に3万円はもったいない。
結局、1万円以内に抑えて、カスミ草の花を添えて量を増やした。見た目、見事なバラの花束になった。
ちなみにカスミ草は菊池桃子の「もう会えないかもしれない」の歌に出てくる、小さな白い花である。

それにしても、東のチイママは謙虚だった。
二人で買い物に行ったとき、好きなものを何か買ってやるよ、と僕が言うと
「お父さんとお母さんの好きな食べ物を買ってください。父母が喜ぶ顔が見たいの」と答えた。

丁度、デパートで「京都うまいもの展」という催しをやっていた。

「お父さんは漬物が好きだから京の名物○○漬け、これを買って。お母さんは甘いものが好きだから
 京の銘菓○○、これを買って、そうそう、お母さんはケーキが好きだから京の○○のケーキも買ってね。
 私が仕事で忙しくて、両親を京都に連れて行ってあげられないから、これで我慢してもらうわ」

漬物やお菓子やケーキの値段などたかが知れている。彼女の言いなりにいろいろ買ったが、
それでも合計して1万円に届かなかった。

東のチイママは独身で両親と同居していた。彼女は昼間、会社の事務員として勤め、夜はスナック勤めだった。
草笛が株研掲示板に張り付き、早朝から深夜まで買い煽りしているのと同じで、
東のチイママは朝9時から深夜12時過ぎまで、寝る時間以外は働き詰めの生活だ。

彼女の父親は病身のようだった。きっと一家の経済は彼女の細い腕で支えられているのだろう。
東のチイママに何か買ってやって気を引こうとしたのに、彼女の両親への親孝行のお手伝いをさせられたわけだ。
まあ、これこそ徳を積み、心の器を磨く行為の美しい見本だわな・・・と僕は自分で自分を納得させた。

                         来週土曜日 チイママ物語 第6章につづく

  • [6]
  • チイママ物語 第6章

  • 投稿者:@楽
  • 投稿日:2013年 6月30日(日)23時11分43秒
 
休日モード チイママ物語 第6章
   投稿者:草笛   投稿日:2013年 1月19日(土)18時25分28秒

亭主公認みたいになって、おおっぴらに西のチイママ目当てでスナックに通っていた。
このあと、すべてが平和裡に推移したのかと言えば、そうではなかった。
事実は小説より奇なり。西のチイママとの関係が大きな転換点を迎えたのだ。

ある日、スナックのドアを開けるとチイママが飛んでやってきて僕をボックス席に連れて行った。

「草笛さん、丁度いいときに来てくれてうれしいわ。折り入って相談したいことがあるの」

おいおい、西のチイママも自分のスナックが持ちたくなったのかいや?と僕は心の中で当惑した。
先手を打って断りを入れた。

「悪いけど自分でスナックをやってみたい、って言うのなら、俺は相談に乗れないよ。
 そもそも、君はスナック勤めがまだ浅いから、もっとチイママのままで修業したほうがいいよ」

実を言うと、この頃には、2012年竜巻暴落の嵐が吹き荒れていて、株で大損。
追証の工面で手一杯だったのだ。

「そんなんじゃないの。私、すぐに家を出たいの。
 主人と大喧嘩したの。もう夫の顔を見るのも嫌になったわ。離婚することに決めたわ。
 草笛さんは知り合いが多いから、アパートの大家さんを紹介してください。急ぐの、お願い」

チイママは両手を合わせて、地獄で仏を拝むように僕に頼み込んだ。
まさか離婚話の相談をされるとは夢にも思わなかった。しかもアパートの世話をしてくれと言うのだ。
亭主はやさしく温厚で真面目、顔もハンサムだ。彼女自身、内助の功で、家計の足しにするためスナック勤めを
始めたはずだ。スナックに勤めたことで亭主と離婚するのでは本末顛倒だ。だが実はこういうケースがよくあるのだ。

一般的にスナックに主婦が勤めると、お客が気前よくお金を使うのを目撃するようになって人生観が変わってしまう。
自分の亭主はちょっとした買い物をしても、無駄遣いするなよみたいな顔をするのに、
世間の他の男性は気前良く、お金をパア~と使ってカッコいい。

いままでの自分はスーパーマーケットで一袋30円のもやしにしようか20円の特売もやしにしようか迷っていた、
カップラーメンは1個120円と高いから、袋入りラーメンを5袋パックを特売350円で買って一個につき50円浮かしていた、
それって一体何だったの?そんなつつましい、幸せと思ってきた暮らしが、スナックに勤め出してから急に色あせて見えて来た。

お客に甘えれば、高級焼肉屋で一番高いカルビを食べさせてくれるし、寿司屋にも連れて行ってくれる。
他のスナックに飲みに連れて行ってもくれる。
亭主が結婚して以降、そんなことしてくれたか?自分の地味な日々の生活は一体何だったんだろう。

そう思うと、大切に思ってきた亭主が物足りなく見えてくる。
ほんとは、どの男も家ではケチケチしているが、スナックにたまに行くときだけは、
カッコをつけて気前よく振舞っているのだ。普通の日はみんな地味なもんだぜよ。

「あのなぁ~~、早まってはいけないよ。女が離婚して一人で生きて行くのは大変だよ。冷静になれよ。
 君の亭主、いい人じゃないか。早まってはいけないよ」
「もういいの。主人がお前なんか出て行け、って言ったから、わたし、
 じゃあ離婚する!と言ってしまったわ」
「今頃、亭主は言い過ぎたなと後悔しているさ」
「きっとそうでしょうね。でも、もう心が決まったの。
 女は一度決心したら、もう後戻りできないものよ」

西のチイママの亭主は温厚な男だ。僕に「嫁さんがお世話になっています」と礼を言うくらい真面目な男だ。
しかし、そうは言ってもやはり、自分の妻が、外でチヤホヤされて、他の男と食事に行ったり、飲み歩いたりすることが
気分的に面白かろうはずがなく、心中おだやかではなかったのだ。真面目な性格だから、じっと我慢してきたが、
何かの拍子に堪忍袋の緒が切れて、チイママに出て行けと怒鳴ったのだろう。その気持ち、痛いほど分かる。

「どうしても離婚するのか?なんとか思い直せないのか?」
「わたし、もう家には帰らない。だから、草笛さん、住まいをなんとか探してよ」
「そうかい、そこまで言うのなら、もう何も言わないよ。アパート探しに協力するよ。いつがいい?」
「早い方がいいわ。明日、朝10時、アパートの大家さんのとこに連れて行って!」

チイママの夫から嫁のことをよろしくと頼まれていたが、まさか離婚後の住まい探しの手助けをすることになろうとは!
彼もこんなことになるとは夢にも思わず、
「草笛さん、嫁のことをよろしくお願いします」と言っていたんだろうな。つらい話だな。

                明日 日曜日夜のチイママ物語 第7章に つづく

  • [5]
  • チイママ物語 第7章

  • 投稿者:@楽
  • 投稿日:2013年 6月30日(日)23時10分46秒
 
休日モード チイママ物語 第7章
   投稿者:草笛   投稿日:2013年 1月20日(日)17時40分36秒

西のママのアパート探しの話に入る前に東のチイママに話を戻そう。
東のチイママの親孝行を僕が肩代わりして、そのあとでスナックに行ったときのことだ。

東のチイマアはAKB48風味の小柄な身体で愛くるしい顔をしていた。
僕をいつものボックス席に座らせて、まずペコリと頭を下げた。

「この前は京都の名物をありがとう。お父さん、お母さんがとても喜んだわ」
「両親が喜ぶと、それを見て娘のチイママがうれしい、チチママがうれしいと俺がうれしい。
 これを善の循環と言うんだわさ」
「わけのわからないこと言って、変な草ちゃん!」

そう言ってギュっと手を握ってきた。
東のチイママは親しみを込めて、僕をいつしか草笛さんではなく、草ちゃん、と呼ぶようになっていた。
いい歳をしたオヤジに、ちゃん付けはないだろうが、草ちゃんと呼ばれると妙にうれしい。

「チイママから草ちゃんって呼ばれて手を握られると、
 自分が若い頃に戻って、恋人に会っているみたいだよ」
「草ちゃん、わたしを恋人だと思ってもいいよ!」

チイママは可愛い顔して、うれしいことを言ってくれる。
これだから料金が高い高いと文句を言いながら東のスナックについつい来てしまうのだ。

「あのね、わたし、どのお客様にも、この店の中では恋人になった気持ちで接しているのよ。
 この空間はバーチャル世界なの、疑似恋愛体験をお客様に提供しているわけなのよね」

東のチイママはしっかりと自分なりのスナック哲学を持って接客している。素晴らしいチイママだ。

「中には、勘違いしてバーチャルの一線を越えて、付きまとうストーカー的なお客もいるんじゃないか?」
「そうそう!そこが悩みなの。スナックの中の世界と現実世界の境界が分からないお客がたまにいるのよね。
 わたしの昼間の職場にまで押しかけてきて、会社の前でずっと立っている男の人もいるの。困っちゃうわ」
「そのストーカー、歳はなんぼくらいの男かや?30歳から40歳くらいの独身者、と俺は大連水晶玉で霊視する!!」
「大外れ~~!それがね、妻も子もある50歳代のおっさんなのよね」

歳もわきまえず、分別のない男が世の中にはいるもんだなぁと一瞬思ったが、よく考えてみたら、人のことを僕は笑えない。

この東のスナックは、ママ代理とチイママの他に若いヘルプさんが二人いる。女性スタッフ4人の構成だ。
チイママと二人きり、ボックス席の一方に並んで座って親しげに話し込んでいたら、ママ代理がやってきて、向いに立った。
「草笛さん、私も同席していいかしら?それともお邪魔かしら?」と言いながら、もうちゃっかり座ってしまっている。

ママ代理に、お前を粛清する、あっちへ行け!とは、株研掲示板の中ではあるまいし、面と向かって言えない。

「いいよ、君も好きなものを飲めよ」
「ありがとう!ねえ、草笛さん、他の子も呼んでいいでしょ?」

店はすいていて客は僕一人だった。ヘルプさん二人は所在なさげにカウンターの中で立っていた。

「う~~む、まあ~~その~~、それもよいかもしれないねぇ・・・・」

いい歳をしたオヤジが若いママ代理の申し出を断れるものではない。
チイママだけいれば他の人は要らない、とは口が裂けても言えない。
ママ代理が座ったまま大きな声でヘルプさんたちを呼んだ。

「みんな~~こっちにお出でよ。草笛さんが好きなもの飲んでいいってよ~~~♪」

僕の横にチイママ、目の前にママ代理とヘルプさん、補助席にもう一人のヘルプさん、
僕一人を女性4人が囲む恰好になった。ママ代理とヘルプさんがお代わりの飲み物を次々所望した。
チイママが僕の方を向いて、そっと耳打ちした。

「草ちゃん、これって、ハーレムっていうやり方なの。悪いわね、今日はすごく高くなるわよ」
「いいよ、ハーレム結構、俺は店の売上が増えてチイママの立場が良くなれば、
 それで幸せだよ。善の循環だよぉ~~~」
「変な草ちゃん・・・・ごめんね、草ちゃん、ごめんね。今夜は高い料金になるよ・・・
 私を怒らないでね・・・・」

チイママの顔が真顔になって、泣き出しそうに見えた。

「いいさ気にするなよ。分かってて俺は今夜一人で来たんだから」

代理ママは向かい側のシートで、最初はヘルプさんと一緒にはしゃいで飲んでいたが、
チチママがひそひそと小声で僕に話かけているのを、目の前で見せつけられて
次第に不機嫌そうになって黙りこんだ。

                        来週 土曜日の第8章に つづく

  • [4]
  • チイママ物語 第8章

  • 投稿者:@楽
  • 投稿日:2013年 6月30日(日)23時09分35秒
 
休日モード チイママ物語 第8章
   投稿者:草笛   投稿日:2013年 1月26日(土)15時07分51秒

読者から東のチイママと西のチイママが鉢合わせするシーンはないのか?という質問があった。
読者の期待に答えてそれに近いシーンがあったことを語ろう。
これはストーリーの流れとは別の番外編と思って読んでほしい。

我が家から東西にそれぞれ歩いて数分のところにスナックがあるのだからチイママがお互いの
スナックに飲みに行くことがありそうなものだ。ところがそれは一度もなかった。

二つのスナックはライバル的な雰囲気があった。東のスナックにしてみれば
あとから開店した西のスナックの存在は面白くなかった。西の方が料金が安いからお客が西に流れたからだ。
当然のこととして、店の看板である東西のチイママ同士もライバル意識があった。

二つのスナックは休日が別の日だったので、西のチイママと焼き肉を食べに行ったとき
「あとで東のスナックで飲もうか?」と誘ったら、
西のチイママから、東のスナックへなんて行ってたまるか、みたいな感じで断られた。

東のチイママの休日の日、一緒に出掛けたときのことだ。、
僕は目立たないようにチチママの軽自動車に乗せてもらっていた。
そこに、なぜか狙い撃ちしたように西のチイママから携帯電話が入ってきた。

「あなたの知り合いのお客様が、草笛を呼べと酔っぱらって言っているから、急いでお店に来てよ!!」
「○○さんが来ているのか!仕方ないな、すぐにそっちに向かうと伝えておいてくれい」

選挙の時にすごく世話になった人からの呼び出しは、至上命令と同じで義理を欠かせない。

「悪いけど、西のスナックに顔を出さなきゃいけなくなったよ」
「ええ~~っ 私はどうなるの!」
「君も一緒に西のスナックで飲もうよ。西のチイママと会って見るのもいいだろ?」
「嫌よ、わたし、西のスナックなんて絶対に行かないからね。西のチイママになんか会いたくない!」
「仕方がないな、とにかく男の義理を欠くわけに行かないから、この車で西のスナックまで送ってくれい」
「わかったわ、草ちゃんを西のスナックの入り口まで送ったら、わたし、そのまま帰るわよ!!プンプン」

西のスナックに着くと、東のチイママはさっさと車を発車させて帰ってしまった。
スナックのドアを開けると、西のチイママが飛んできて出迎えた。

「草笛さん、無理を言ったわね。今日、大事な用事があってこの店に来れない、と聞いていたから
 携帯に電話するのは気が引けたんだけどね。お客様がどうしてもあなたに連絡をしろと言うもんだから・・・」
「気にするなよ。○○さんの呼び出しなら、他の用事を投げ打ってでも駆けつけなきゃあね」
「それで草笛さん、今日は何の用事だったの?」

隠すほどのことではないし、西のチチママがどういうリアクションをするか見てみたいという
意地悪な気持ちが湧いてきた。

「実は、さっきまで東のチイママと一緒に居たんだ。彼女がこのスナックまで車で送ってくれたよ」
「へえーーー、それはよかったわね・・・面白いじゃないの。
 東のチチママとやらの顔が見てみたいわ。まだ外にいるかしら?会って挨拶してくるわ」
「もうおらんよ。彼女、走り去るようにして帰ったよ」
「残念ね。一緒にこの店に入ってくればよかったのに」

西のチイママの自信と余裕なのだろう。東のチイママよ、私の前に来るなら来てみろ!という気迫を感じた。
こうして、スナックのドア一枚隔てて、東のチイママと西のチイママはニアミスをやったのだけれど、
ついに二人の看板売れっ子チイママは一度も出会うことはなかった。

                           明日 日曜日の チイママ物語 第9章につづく

  • [3]
  • 休日モード チイママ物語 第9章

  • 投稿者:@楽
  • 投稿日:2013年 6月30日(日)23時08分36秒
 
休日モード チイママ物語 第9章
   投稿者:草笛   投稿日:2013年 1月27日(日)15時53分1秒

離婚を決意した西のチイママと朝10時に待ち合わせてアパートの大家の事務所に行った。
大家のアパートは中古物件が多い。最近田舎でも大東建託などのしゃれた外観の新しいアパートが
どんどん建つので、中古物件は空き家になりがちだ。大家からは「アパートを探している人がいたら紹介してください」と
常々頼まれていた。携帯電話をすると大家は松江市に行っていた。僕が入居者を紹介すると言ったら飛んで帰ってきた。

僕とチイママは大家が松江市から帰って来る時間に合わせて事務所に行った。
事務所の前に、ほぼ同じ時刻に僕らと大家は到着した。

「この人は人柄がしっかりしている。俺の紹介だから間違いない人だ。何かあったら俺が責任を取るから部屋を貸してやってください」
「いいですよ、草笛さんの紹介なら間違いがないです。これから、いろいろアパートや一戸建ての物件を見て回りましょう」
「俺はこれで帰るから、あとはよろしく」

ところが西のチイママが、帰ろうとする僕を引き留めた。

「草笛さんも一緒に部屋を見て意見を言ってよ。私一人では判断がつかないから」

大家がそれに同調して僕を引き留めて言った。

「それがいいですよ。草笛さんにも色んな物件を見ておいてもらいたいですからぁ~~
 部屋を見て回る前に、まあ、ゆっくりとお茶でも一杯、事務所で飲みましょうや!」

この大家は競売にかかった家やアパートを捨て値、大底、格安で買い叩き、修繕して高値で貸してしっかり儲けている。
お金にはキッチリした男で、普段は僕にお茶の一杯、茶菓子の一つさえも出し渋るタイプなのだ。
その日、西のチイママは離婚する解放感からなのか、張り切って胸元の開いた黒いブラウスに赤い超ミニスカート姿だった。
大家は僕にお茶を飲ませたいのではなく、魅惑的な姿のチイママをもてなしたかったのだ。男というものは現金なもんだぜよ。

僕は事務所に入ることに抵抗感があった。と言うのも大家の事務所にパートで勤めている女性は、
選挙の時の草笛後援会の元婦人部長だったのだ。
元婦人部長の歳は50歳代、田舎の松田聖子と呼ばれていたほど可愛い人だ。選挙のとき、僕の妻は全体の差配のために
宣言カーに乗らなかったので、この婦人部長が僕の妻役をやってきた。宣伝カーを降りて婦人部長を連れて握手して回るとき
この婦人部長は「草笛の家内でございます!よろしくお願いします」としゃあしゃあと言っていた。
お年寄りたちは「まあまあ、奥さんまで深々と頭を下げてくださって、ありがたや、ありがたや」と拝むように婦人部長と握手をしていた。
これは羊頭狗肉作戦というより羊頭牛肉作戦と言ってよかろう。

「お~~い!お客様が来られたぞ、お茶を持ってきてくれ」

大家が事務所に入るなり大声を上げた。は~~いという声がして、元婦人部長がアイスコーヒーを運んできた。
元婦人部長は僕とミニスカートのチイママが並んで座っているのをジロリと見た。
そして何も言わず、知らんふりをしてプイっとアイスコーヒーを置いて引き下がった。
なんかヤバいな、という予感がした。

大家に連れられてアパートの部屋を3つと一戸建てを2軒見て回った。チチママの時給では一戸建てはハナから無理だったが
なぜか大家は「一戸建てが余裕があって落ち着きまっせ!」としきりに僕に勧めるのであった。
結局、駐車場付きの平屋のアパートを選んだ。

回りに畑が点々と残っていて日当たりと見晴らしが良いアパートだった。
このアパートなら間取りもいいし外の風景も広々としていていいね、と
チイママと二人並んで窓を開けて外を見たら、近所のおばさんたち3人が道端にいて立ち話をしていた。
おばさんたちが立ち話を中断して、一斉にこっちに視線を投げかけてきた。
おばさんたちのきつい視線が僕の心に突き刺さって痛かった。何かヤバいな、という予感がした。

入居者が決まって、大家は大喜びだった。

「草笛さんの紹介ですから、部屋代は5000円値下げします。
 先に契約書を作成し礼金敷金を入れてもらってから入居してもらうのが不動産業界の鉄則ですが、
 草笛さんの紹介ですから、礼金敷金はお金が出来たときの支払いでいいですよ。
 今日、すぐに鍵を渡しますから、布団だけ運びこめば、今夜から寝られます。
 それから、今月のアパート代はまけておきまっせ!なんと言っても草笛さんの紹介ですからあ~~」

渋い大家さんにしては大盤振る舞いだ。「草笛さんの紹介」を連発し強調していたが、
チチママが美人なので大家もカッコいいところを見せたかったのだろう。
帰り際に、大家が僕にそっと耳打ちをしてニヤリと笑った。

「草笛さん、いよいよ2号さんを囲うんですね。この色男!憎い憎い、うらやましい~~」
「おいおい、草笛を軽く見てもらっては困るぜよ!彼女は2号ではないよ!!!
 もしも俺が彼女を愛人にするのなら2号じゃなくて5号くらいなものだわな、はははのは」

こういうときに血相を変えて否定すると、かえって誤解されるから、冗談を言っておいた。

数日後、床屋に散髪に行った。この床屋の奥さんは若くして亭主に死なれて独身だ。
亭主が死んでからは一緒に町外に出て飲み歩いた仲だ。
床屋談義というくらいだから、床屋に行けば、近隣住民の噂話の最新情報が手に入る。

「最近、変わった話はないかい?誰かが宍道湖で溺れて死んだ、パチンコやり過ぎて破産した、
 サラ金の借金が返せなくて夜逃げした、ちゅうような世にも恐ろしい不幸な話が面白いわな。
 他人が儲かった話は、聞いていても、なぜか面白くないわな。
 どこかのオヤジと、どこかのおばさんが出来て駆け落ちした、みたいな、男と女の浮いた話も好きだぜよ」

「そうねえ、この頃、この町もすっかり衰退して高齢者の葬式の話題以外は、これと言った面白い話題はないわねぇ・・・
 あっ!!そういえば、耳よりの噂話が一つあったわ、最新情報よ。それを聞かせてあげるわ。
 数か月前に私がスナックに行ったら、たまたま草笛さんに会ったことがあるよね」

「そうだったね、カウンターにあんたも来て、俺と一緒に飲んだっけな」

「あのとき、そばにミニスカートをはいた派手なチチママがいたでしょ。あのチイママが離婚したみたいよ」

「へえーー、知らなかったな。さすが床屋さんは情報が早いね。それでチイママはどこへ行ったんだろ?」

「それがね、この町の近所のアパートに住み始めたそうよ。
 私の女の勘だと、女は男が出来て離婚するものだから、そのアパートを世話した男が怪しいと思うわ」

「へぇーー、その、チイママにアパートを世話した男の身元はまだ判明していないのか?」

「残念ながら、私もまだそこまでの情報は掴んでいないのよ!情報が入り次第に、
 一番先に草笛さんに教えてあげるわね!乞う ご期待よ、
 これは久方ぶり田舎のスキャンダルよ、うふふ・・・きっとどっかの小銭を持った好き者のオヤジよ・・・」

後ろ髪をさりげなく前に回すように美しく整髪してもらって、気分爽快にするつもりが、
なにかヤバイ予感がしてきた。気分が重くなった。田舎の世間はまっこと狭いのだ。

              来週 土曜日のチチママ物語 第10章に つづく

  • [2]
  • 休日モード チイママ物語 第10章

  • 投稿者:@楽
  • 投稿日:2013年 6月30日(日)23時07分21秒
 
休日モード チイママ物語 第10章
   投稿者:草笛   投稿日:2013年 2月 2日(土)19時12分56秒


   休日に床屋で散髪してもらってから数日後のことだ。
いつものように僕は2階の書斎でパソコンに向かって

「6722A&T 買い買い買い!!」「男になれ~~ぇ!ここで買えなきゃ男じゃない!!斬り込め!!」

と連続投稿をして買い煽っていた。

6722A&Tが500円大台に乗せたあと、また400円すれすれになってしまって
高値斬り込み信用玉の評価損が膨らんでいたので、僕は必死の形相で叫ぶように買い煽っていた。

「この400円台のA&Tを買わない奴は阿呆だ!A&Tを買え!!買わぬならあっちへ行け!このタコどもめ!!」

買い煽りもあまりにも切羽詰まって絶叫してやると、読者も悲惨さを感じて一歩身を引いて誰も買おうとしないものだ・・・
買い煽っても、買い煽っても、1枚100株の成り行き買い注文さえも入ってこないパソコンの中の静止画像の5本板。

「神はついに草笛を見捨てたもうたか・・・・」

と泣きたい気持ちで嘆いていたところに、
一階に居住する妻が階段下までやってきて。大声で僕を呼んだ。

「あなた~~! 一緒にお茶を飲みましょう~~下へ降りていらっしゃいよ~~~~」
「お茶はいらんよ!株式相場ではザラバは戦場だぜよ!大本営は常に戦場の将兵とともにあり~~~!!」
「能書きはいいから、降りてらっしゃい!後援会の婦人部長さんがいらっしゃっているのよ」
「ええっ!婦人部長がやってきた?」

悪い予感がした。まったくツキがなかった。
起死回生の決意で正式買い推奨したA&Tは当初の推奨値近くまで下げる暴落になってしまっているし、
婦人部長が僕の家にやって来るし・・・・・彼女が来るということは、チイママのアパート探し同行の件に違いないのだ。

下の座敷で妻と婦人部長が僕を前に座らせて、小一時間僕に説教を垂れた。

妻は言った。

「婦人部長さんから全部聞いたわ。あなたは何を考えているの!この馬鹿亭主!!何度、女で失敗すれば気が済むの!!」

婦人部長が続いて僕に説教した。

「草笛さんね、商売女のやさしさなんて、嘘っぱちなのよ!なによ、あの日、私の目の前でデレデレして!恥を知りなさい!!」

二人がかりで僕に向かって言いたい放題だ。
僕は言われっぱなしで引き下がるような、やわな男ではない。

「どうも、あなたがたには誤解があるようだ・・・俺は単に困っている女性のために善行を行っただけだ。
 良い行いをやって他人が喜べば、自分もうれしい。人のために尽くすこと、徳を積むこと、心の器を磨くことが大事なんだよ」

しかし、妻も婦人部長も気性が荒いから、そんな僕の「善の循環の哲学」などに耳を貸そうとはしなかった。

「だまらっしゃい!!このド阿呆亭主!!あんたは利用されているだけなのよ」

「そうよ、そうよ、水商売の女なんかに誠意は通じないわよ。
 草笛さん、きっとそのうち騙されるから、今後あの女を相手にしちゃあダメよ!!!」

大正末期や昭和初期のカフェの女給の時代じゃあるまいし、
商売女だの水商売の女だの、とんでもない時代錯誤の発想だわな、
家庭の主婦が、経済上の事情でスナックに勤めることは、平成の時代では、
コンビニのレジのパートに出るのとおんなじだよ~~~~~っ!

と僕は婦人部長を説得にかかった。だが婦人部長は聞く耳を持たなかった。

「私だって主婦として家計は楽じゃあないわよ!でもスナックに勤めたりはしていないでしょうがぁ~~!!
 私はね、貸家の大家の小汚い事務所で、人目にもつかず地味にパートをやっているのよ!どうしてくれるの!!」

婦人部長は妻以上に怒りまくっていた。
確かに選挙のときは婦人部長は選挙カーに乗ってスターのように輝いていた。女優気取りだったわな。
しかし僕の政界引退、株式投資専業の結果、今では後援会も解散して彼女の出番がすっかりなくなった。

彼女こそスナックに勤めれば、田舎の松田聖子ちゃんと呼ばれていたくらいの器量と愛嬌だから
すぐにママ代理くらいに抜擢されると思うがな・・・でもそんなことを言うとまた怒鳴られるから黙っていた。

妻にはいつも叱られているから慣れているが
婦人部長から罵倒されるように叱られたのは初めてのことだったので辛かった。

結局、二人がかりで責められて、今後、西のスナックに行くことを禁止すると申し渡された。当分の間、夜間外出禁止令も出た。
まっこと戒厳令の夜だわな。泣く子と、地頭と、妻と婦人部長には勝てない。家庭の安寧があってのスナック通いだからね。
家庭をブチ壊してまでスナックでカラオケを歌っていたら、ほんまもんの阿呆だ、タコだわな。

妻と婦人部長から夜間外出を禁止された腹いせに、
僕は株研掲示板の中のバーチャル帝國の国民にも夜間外出禁止令を発布したのであった。
それで少しは気分が落ち着いた。

こうして、僕は西のスナックに行かなくなった。そうするうちに西のチイママは西のスナックからいなくなってしまった。
元の隣町の系列スナックに戻って行ったのだ。離婚したので地元のスナックに居づらくなったのかもしれない。
それからは西のチイママとはすっかり疎遠になってしまった。

                  明日日曜日のチイママ物語 第11章につづく


  • [1]
  • 休日モード チイママ物語 第11章 (最終章)

  • 投稿者:@楽
  • 投稿日:2013年 6月30日(日)23時06分2秒
 
休日モード チイママ物語 第11章 (最終章)
   投稿者:草笛   投稿日:2013年 2月 3日(日)18時36分30秒


   西のスナックへ行くな!ミニスカートのチイママにはもう会うな!
と、妻と元婦人部長から叱られたが、東のスナックのことは何も言われなかった。
東のチイママに会いに行くのは合法なのだと僕は自分の都合のよいように解釈した。

人間は常に前向きに自分の都合のよいように発想することが大事だ。西のチイママに会えない分、
よけいに癒しの雰囲気のある東のチイママの顔が見たかった。東のスナックには内緒で通い続けた。

一週間くらい東のスナックに行かないと、夜の8時ごろ携帯電話がピカピカ光る。チイママからのメールだ。
「こんばんは☆ 草ちゃん 歌いにきませんか?」
これを見たらパブロフの犬の条件反射みたいに、思わず、「行く行く!すぐ行く♪」と返信してしまう。

外出禁止令は破るしかない。現代の日本では夜間に外出していても憲兵隊に見つかって連行されることはない。
外出禁止令をかいくぐるために、部屋の明かりをつけっぱなしにし、パソコンとテレビをつけ、
4838スペースシャワーから流れて来る音楽の音量を大きくして、あたかも僕が部屋に引き籠っているように偽装しつつ、
妻の目を盗んで東のスナックに駆けつけていた。孫子の兵法!敵を欺いて偽装することは戦争に欠かせない作戦だ。

ある夜遅く、飲み代の支払いを済ませて店を出た僕を、チイママが店の外まで追いかけてきた。
僕に言っておきたいことがあると言う。

「わたしね、この店をやめることにしたのよ。ママにはもう伝えてあるわ」
「それで、次はどこのスナックに勤めるのかや?」
「もう夜のスナック勤めはしないわ。父親の容態が悪くなって、看病のために、夜、家をあけられないのよ」
「そうか、それなら仕方がないわな。さみしくなるの~~」

東のチイママは病気がちの父親を支えて、昼も夜も働いていた。
それだけでも大変なのに、スナックではお客に人気があることが裏目に出て
ママ代理からは辛く当たられて居づらくなっていた。父の看病もさることながら
東のスナックの高額料金路線が、チイママの「もてなしの心」と相いれなくて、
これ以上スナック勤めを続けるのが嫌になっていたのだと思う。

スナック勤めを完全にやめてしまい、他のスナックにも勤めないのなら、
東のチイママと僕との接点がなくなり、疑似恋愛ゲームも終わりだ。

まさか分別のない例のオヤジみたいにチイママの昼間の勤め先の会社の前に立って、
チイママの事務員姿を見つめているわけにもいかない。
西のチチママに続いて東のチイママともいよいよお別れの時が来た。

「それじゃあ、これでバーチャルな疑似恋愛はゲームオーバーだね。お別れだね」

「そんなことないわよ!草ちゃん、私にお店を持たせてくれると言ったじゃないの。
 そのとき、わたし、スナックに復帰するわよ。今度はチイママじゃあなくて、れっきとしたママとしてだよ」

チイママは、うれしそうな顔をしてニッコリと笑った。
おう!俺に任せろ、と言いたかったが言えなかった。秋口から持株が全部暴落していて、どうしようもない状況だったのだ。

「チイママの希望はステージのある、広い店だったなあ・・・・俺、これから頑張って大儲けして金持ちにならんといけんね、ははは」

暗に、今の俺は縮小貧乏証券貧民に落ちぶれていて、力になってやれないよ、とチイママに告げたつもりだった。

「いいよ、すぐでなくても。草ちゃんが、お店持たしてくれる日、わたし・・・ずうっと待っているからね・・・」

チイママに店を持たせてやれる日なんて、もう永遠に来るとは思えなかった。
6722A&T413円、6969松尾電機117円、宮地エンジ117円、なんぼ買い煽っても
全然、上がりはしない。このまま相場が下げ続ければ信用期日到来の日に建て玉損切の差損金額を払うメドが立たない。

非力な自分が情けないから、立ち話を打ち切って、それじゃあ、さよなら、と言って僕は逃げるようにして足早に歩き出した。
角を曲がる前にふと振り向くと、チイママは店に入らず、そのままずっと僕を見つめて小柄な体で立ち尽くしていた。
チイママ、ごめんな、力になってやれなくて。俺は今、大幅含み損になっている信用建て玉だらけでどうにもならないんだ・・・・

つらいな~~ゼニが欲しいなあ~~~~~~~~
ゼニがないと、細腕で一家を支えて、ひたむきに生きている可愛いチイママの夢も叶えてあげられない。
まっこと金がないってことは最悪だなあ、金がないのは首がないのと同じだ。今の俺は首なしの人間が歩いているようなものだ。
胸が張り裂けるような悲しみを感じながら、僕はトボトボと下を向いて家路を急いだ。

これが東のチチママと会った最後の日になった。風の便りで東のチイママの父は病気が悪化して亡くなったと聞いた。

誕生日にプレゼントを買ってやると言うと、ルイヴィトンのバッグではなく、
謙虚にバラの花を私に頂戴とチイママは言った。
デパートに連れて行って好きな服を買えよと言ったら、謙虚に
自分のものより、病身のお父さんが食べたいものを買ってくださいとチイママは言った。

父親思いの心の温かいチイママだった。
ごめんよ、草ちゃんはすっかり縮小貧乏になってしまい、君に幸せをあげられなくて・・・

                    チイママ物語 第11章(最終章)  完