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  • たかられ屋物語

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たかられ屋物語(著:草笛さん)

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sage

  • [8]
  • 第1章 投稿者:草笛  投稿日: 6月 8日(水)23時01分39秒

  • 投稿者:@楽
  • 投稿日:2013年 6月29日(土)23時16分4秒
 
株をやっているといろんな面白い人との出会いがある。
株をやっていなければ一生会うことのない人と、幸か不幸か出会って
しまうところに、株のもうひとつの甘美な刺激があるのかもしれな
い。

週末モード物語と銘打って、私は株で出会った人々の悲喜こもごも
の人生を描いてきたが、
昭和末期から平成初期のバブル時代のネタも尽きてきて、しばらく
書いていない。
平成10年代(西暦2000年前後)からネット時代になり
そこでまたいろんな面白い話があるのだが、まだ生々しすぎて歴史
になっていない。

関係者がこの株研掲示板を読んでおられる可能性もあるので
書くに書けないのだ。ネット時代のさまざまな出会いは一生封印し
てエモトの風呂桶を棺桶代わりにあの世まで持っていくしかあるま
い。

まだネットがなくて、電話で営業マンを通して株の売買をやってい
たころの話を今夜はやってみよう。

私は島根県の住人だ。バブル前から株がよく当たると口コミで名前
が売れて、県内に私の株の後援会組織みたいなものが自然発生的に
できていた。
そのうち、県境を接して文化圏・経済圏も重複する鳥取県にも草笛
後援会ができて山陰両県の株好きの組織が出来上がった。
鳥取県も島根県と同じく東西に細長い県なので、私は主に鳥取県の
西部に顔を出していた。

山陰の商都と呼ばれる米子市は島根県の東の安来市に隣接し方言も
似ている。
商都と言われるだけあって株好きが多かった。
後援会米子支部長になった人が顔が広くて、米子市へ行くとたくさ
んの人が集まったものだ。

集まってくる人の中に松尾さんと言う地味にゼニを貯め込んだ感じ
の中年の小売店主がいた。株は少しだけやっていて、ほとんどの資
産は預金や保険になっていた。田舎者風で風采の上がらない人だっ
た。
              このあとすぐ第2章につづく

  • [7]
  • 第2章 投稿者:草笛  投稿日: 6月 8日(水)23時07分47秒

  • 投稿者:@楽
  • 投稿日:2013年 6月29日(土)23時15分31秒
 
すべからく株を始める人には結構ケチが多い。それもそうだ、ケチ
でないと最初の投資資金が貯まらない。まずタネ銭がなけねば相場
は張れない。ゼロは1億倍してもゼロだ。

松尾さんは米子近郊の町で食料品と雑貨の店を経営している人だっ
た。お店の名前は「宝屋」。時代はスーパーマーケットが主流になっ
てきていた。

「昔はうちの店も流行っていたんですが、いまは米子市内の大手ス
ーパーにお客を取られてジリ貧ですわ。なんとかしなくては、と今
日の講演会に来ました」

「私の奨める銘柄はたいてい2倍以上になりますからね。あなたも
きっと、儲かりますよ」

夜に飲み歩くつもりで米子市のホテルに泊まっていた私は、午後の
講演のあと、この人は貯め込んでいるな、と目をつけて、松尾さん
を飲みに誘った。松尾さんは主宰の私に誘われて喜んでついてきた。
まず一見で小料理屋に入り腹ごしらえもかねてビールを何本か頼み
適当に料理を作ってもらって食べた。

「さあ、次は歌の歌えるスナックでも行きましょうか。松尾さんの
行きつけの店で綺麗なママのいる店がありますか?」
「ええ?商工会のつきあいで米子のスナックに行くことが年数回あ
るくらいで
 私にはいきつけの店などないんですわ。すんません」
「そうですか、じゃあ次の店も、ぶっつけ本番で入って見ましょう。
 意外な鳥取美人に会えるかもしれないしね」

帰り支度をし始めた私たちに、小料理屋のおかみが、計算書を持っ
てきた。7800円だった。まあ二人で飲んでリーズナブルな値段
だ、と私が払おうとすると松尾さんが私の手をさえぎった。

「ちょっと待ってください」
「いいんですよ松尾さん。私はご当地の皆様から講演料をいただい
たから私がおごりますよ」
「そうじゃあ、ないんですよ」
松尾さんはビール瓶と料理の皿を数えて、おかみに向っていった。
「ビール中ビン5本、刺身盛り合わせ、冷奴、煮付け2皿づつ、こ
れでなんで7800円もするんかの?明細書を書いてくれんか
の?」
「松尾さん、スーパーで買い物しているわけないがね。い
ちいち正確に計算せんでもええがね。ここは気持ちよく払いましょ
う」
「いや、そうはいきましぇん。ビールが1本500円、刺身盛り合
わせ2000円と見ても、6000円がいいとこだわ。私たちを県

の者だと思ってふっかけているんだがね」

店のおかみが、ふくれ面で言った。
「あんたたち訛りがひどいけど、島根県の税務署の人なの?もうこ
の店に二度と来ていただかなくて結構! さっさと帰ってちょうだ
い!!」
            このあとすぐ 第3章に続く

  • [6]
  • 第3章 投稿者:草笛  投稿日: 6月 8日(水)23時13分39秒

  • 投稿者:@楽
  • 投稿日:2013年 6月29日(土)23時14分52秒
 
7800円払ったうえに、おかみを怒らせてしまって、しらけた気
分で店を出てた。
「草笛さんに恥をかかせたかなぁ。これ私の分です。だまって受け
取ってごしない」
松尾さんはおずおずと千円札4枚を私に差し出した。

このオヤジは固いな、と私は思った。それも仕方ない。小売店で1
円の儲けも大事にして人生を生きてきた人は細かいゼニ勘定が、雑
巾に染み付いた醤油のように身に染み付いているものなのだ。

次の店のスナックでは水割りと日本酒を飲みながら、ひとしきり歌
って楽しく過ごした。ここでは料金ではもめなかった。最初から
一人3000円で飲んで歌わせてくれと松尾さんが交渉してから入
ったからだ。

「草笛さん、今夜はとても楽しかったです。これで帰ります。今夜
教えてもらった銘柄、家に帰って四季報で確かめてみて明日買いま
すからね。絶好調!!」
「松尾さん、もう帰るの?なにを言っているの、夜はこれからでし
ょうが!
 そろそろ米子で一番有名なクラブへ行ってみましょう。
大丈夫、私がおごりますから」
「ええっ、まだ飲むんですか?でもクラブって、高いでしょ?私は
そんなとこへは行ったことがないですよ。実はスナックでピーナッ
ツをおつまみにして飲んで何千円も払うことさえもったいないと思
っているんですからぁ」

帰ると言い張る松尾さんの肩を抱くようにして、タクシーに乗せた。
「一番流行っているクラブはどこよ?そこに行ってください」
飲み屋街の真ん中の一等地のクラブにタクシーは着いた。
店に入ると、まだ時間が早くてホステスたちは、店のすみのボック
スで固まって座っていた。

当時、私は株で儲かっていたので、毎晩のように松江市のクラブを
はしごして飲んでいた。松江市に比べればさらに地方都市の米子市
のクラブなど料金はたかが知れている。手持ち無沙汰そうなホステ
ス全員に声をかけた。
「みんな、こっちへ来て飲めよ、全員集合!」

スナックとクラブでは別世界だ。スナックはカウンター越しに、マ
マと女の子1名が10人程度の客の話相手をするが、クラブはボッ
クスに座って、一人の客に二人以上はホステスさんが付く。

松尾さんと向かいに座って、お互いの両側にホステスさん、さらに
補助椅子でホステスさんだらけ。店のNO1らしい、テレビドラマ
に出てきてもおかしくないような綺麗な柳腰の女が私の横についた。
彼女らは誰がオーナーで誰がお金を払うのかすぐに見分けてオーナ
ーをまず大事にする。

          このあとすぐに第4章に続く


  • [5]
  • 第4章 投稿者:草笛  投稿日: 6月 8日(水)23時19分22秒

  • 投稿者:@楽
  • 投稿日:2013年 6月29日(土)23時13分6秒
 
「はじめてね。島根からきたのね。島根県ならすぐ来れるわね。
きっとまたきてね。あなた、私の好みのタイプだわ。
私、いま彼と別れてフリーなのよ」
「そうかい、ちょうどよかった。俺も独身なんだ、家に帰るまではね」

私とNO1の女が、お決まりの思わせぶりな会話を楽しんでいる間、
松尾さんは上機嫌でとっかえひっかえホステスさんたちと歌ったり
チークダンスを踊ったりしていた。気分は竜宮城に迷い込んだ浦島
太郎のようだったろう。

その夜、松尾さんに教えた銘柄はメルテックスという店頭株だった。
上場したてで無名の会社だった。親会社はイワキという東京2部の
しっかりした会社だったので、安心して奨められた。もちろん埼玉
県大宮のメルテックスの工場にも出向いて調査済みだった。

結論を先に言えば、1000円前後で皆で仕込んだメルテックスは
大化けして最終的には5450円になった。このメルテックス相場
の勝利で私は念願の億のお金をつかんだ。もちろん、私に口説かれ
てメルテックスに思い切って投資した松尾さんも大儲けした。

メルテックスが上がるたびに松尾さんからは何度もご招待があった。
米子の皆生温泉で宴会をやっては、米子の夜の街に繰り出した。堅
物でスナックさえケチで行かなかった松尾さんが、すっかり変身し
て、クラブをはしごする遊び人になっていた。

店に入ると、松尾さんはスターのようにホステスさんから歓声を浴
びて迎えられていた。最初、私の隣に付いたNO1の柳腰のホステ
スも松尾さんの隣で松尾さんの愛人のようにピッタリと身体を預け
ていた。頭の毛もうすく小柄で見るからに田舎の小売店のオヤジ風
味の人なのに松尾さんはもてまくっていた。ゼニの力はまっこと恐
ろしい。

「草笛さん、ご覧の通りです。もててもててリンダ困っちゃう。チ
マチマした商売なんて、やってられませんよ。草笛さん、いまは毎
日お金が天から降ってくる気分です。人生ってこんなに楽しいもん
だったんですね」

松尾さんは両手で二人のホステスさんの肩を抱いてご満悦だった。
ホステスたちは「宝屋さん、宝屋さん」と松尾さんを持ち上げて呼
んでいたが
私には、彼がホステスさんにたかられて陰では「たかられ屋さん」
と呼ばれているような気がしてならなかった。

     ここまでが前編1~4章です 恐怖の後編5~8章は明日夜放映します

  • [4]
  • 第5章 投稿者:草笛  投稿日: 6月 9日(木)22時33分12秒

  • 投稿者:@楽
  • 投稿日:2013年 6月29日(土)23時12分23秒
 
「松尾さん、相場はいいときだけではないからね。儲けたお金は
 株から抜いて、手堅く銀行預金にしておいたほうがいいですよ」

「なにをおっしゃますか、ダウは10万円になるって言うじゃない
 ですか!株でまだまだ儲けなくっちゃ。次の銘柄、なんですか?メ
 ルテックスみたいにまた思い切っていきますよ。馴染みの娘のいる
 クラブを飲み歩くにも軍資金がいりますから。むっふふふふふふ」

私は堅物として生きてきた松尾さんに株のことは教えたが、お水の
世界の女のことまでは教えなかった。
あなたがクラブの女性にもてているのは、あなたに男として魅力が
あるからなのではなくて、あなたの財布に1万円札が束になってい
るからですよ、と言って聞かせることを忘れていた。

若いとき真面目に暮らして、中年になって女と遊び始めると歯止め
がきかなくなると言われているが、まさしく松尾さんがそうだった。
松尾さんは、行きつけのクラブの店ごとに気に入りの女を作ってい
た。松尾さんは何人もの女を口説いたと自慢していたが、実のとこ
ろは株で儲けた億のお金を目当てに女たちが近づいてきたものだっ
た。
しかも女たちの影には、えぐい男たちがついていた。柳腰のNO1
の女だって「私フリーなの」なんて言っていたが、どんな絶海の孤
島でさえ人間が住みついているように、男のついていない女なんて
いやしない。

松尾さんは女遊びをするときにも、どこかに生来のケチが染み付い
ていた。女たちにお金をやることをせず、頼まれて貸していた。そ
して金利分で女を抱いていた。

彼女たちは、決してお金をくれ、とは言わない。「お母さんが病気に
なって入院するのでお金を貸して」「弟が交通事故を起こして示談金
が必要なのでお金を貸して」などと言う。だが、貸してくれも「くれ」
には違いないのだ。もともとケチな男はケチゆえにお金を女に
貸して金利分で女を抱こうとする。それで最後に元本が返ってくれ
ば、1円もゼニを出さずに済むと考える。

ところがそうは問屋がおろさない。彼女らは、はなっから返す気な
どなくて金を借りるのだ。彼女ら自身が借金を背負っていることも
多く、貸したお金は、貸した瞬間から右から左へともう消えてしま
っている。

お金など貸さずに、それなりのお小遣いをその場でやったほうが結
局安上がりなのだが、もともとケチだった人は、貸す、借りるとい
う言葉のワナに嵌って大金を巻き上げられることになる。
それまで貸したお金を失いたくない一心で、女に言われるがまま、
さらにお金を貸し込み、泥沼に嵌っていく。まあ、松尾さんだけを
笑えない。バブル期の銀行も、倒産前の企業に貸したお金をめぐっ
て似たようなワナに嵌っていたのだから。

     このあとすぐに第6章に続く

  • [3]
  • 第6章 投稿者:草笛  投稿日: 6月 9日(木)22時40分33秒

  • 投稿者:@楽
  • 投稿日:2013年 6月29日(土)23時11分49秒
 
メルテックスで大儲けして味をしめた松尾さんから、なにかいい銘
柄を教えてくれと矢の催促があった。

「松尾さん、次の銘柄探すんだけど、どこもかしこも株が高くなっ
て、なかなかいいのが見つからないんですよ」

「草笛さん、そうもったいをつけずに新銘柄教えてよ。メルテック
スは3000円~4000円で売り切って、元金は次の銘柄用に用
意してあるんです。また儲けさせてくださいよ。頼みますよ」

「困ったな・・・実は、店頭にミタチ電機という株があり、
まだ1000円前後なんです。大株主3位に優良企業フクダ電子が
入っているから倒産はないとに睨んでい ます。
私たちが力を合わせて買えば、500円幅や1000円幅なら上がる
でしょう。
それから先は、どうか分かりません。まだ会社訪問していないので、
本気で買い捲るのは、私が会社を見てきてからにしてくださいね」

松尾さんはメルテックスで味を締めていて、フライング気味に猛然
とミタチ電機を買い始めた。米子の株仲間も提灯をつけて買い参戦
した。もちろん島根県側の後援会も買い捲った。株価はまたたくま
に500円幅上がって1500円になった。

私は奨めた責任があるので、上京して西日暮里駅から北に徒歩10
分ほどのミタチ電機を訪問した。下町の場末の古びた4階建ての貸
しビルの2階部分を借りて営業している淋しげな会社だった。

「なんでうちみたいな会社をわざわざ島根から見に来たのよ?あん
 たも変わった人ですね。この通り、なんの取り柄もない会社ですよ。
 はははのは 話すことはなにもないね」

私に座れとも言わず、応対を面倒臭がる総務課長。事務所の社員た
ちの雰囲気には、やる気のかけらも見られなかった。
やばい!こんな会社に大金を投じたら、どえらい目にあう。帰郷し
た私は、ミタチ電機には深入りするな、売ってしまえ、とみなに伝えた。

ところがミタチ電機は1500円から下がることなく1600円、
1700円とジリジリ上がって行った。上がっていく株を人は売り
たがらないものだ。私の売り指令はみんなから無視された。

松尾さんには、わざわざ米子郊外の宝屋の店まで会いに行ってミタチ
電機を全部売るように口説いた。

「草笛さん、ミタチ電機、含み益がすごいけど、私はまだまだ売りませんよ」
「松尾さん、奨めた私が、売れと言っているんですよ。
 私の奨めた銘柄なのに、なんで私の意見が聞けないんですか!」
「ちょっと、ミタチのチャートを見てよ。上放れ型でしょうが。こ
 の動きは強いですよ。私の相場観だと最低3000円は行くと睨ん
 でいます。5000円も夢ではない。追撃買いを入れながら大きく
 値幅を取りますよ。株は強気でいくべし。
ちょろいもんだよ 絶好調!!」
「・・・・・・・・・・・・」

いっぱしの相場師気取りになっていた松尾さんには、なにを言っても
無駄だった。

             このあと第7章に続く

  • [2]
  • 第7章 投稿者:草笛  投稿日: 6月 9日(木)22時44分50秒

  • 投稿者:@楽
  • 投稿日:2013年 6月29日(土)23時11分5秒
 
ミタチ電機は一応黒字で5円配当もしていた。会社を実際に見た私
にはメルテックスとミタチ電機はまったくものが違うことが分かっ
たが、見ていない人には、それがピンとこない。彼らにはメルテッ
クスが1000円から怒涛の上げ相場を演じた記憶が、ミタチ電機
に重ね合わされていた。

ミタチ電機はどんどん上げて行った。松尾さんは、どうだ、見たこ
とかと自慢げだった。私は1500円前後でミタチは売り切って持
っていなかったが、松尾さんは強気で1900円台の高値さえも買
い増していた。

そして1990年後半、運命のバブル崩壊が起きた。ミタチ電機は
1980円高値をつけて天井を打ち、半年後には4分の1の500
円まで大暴落したのであった。

松尾さんは最初買った1000円前後のタネ玉さえもやられ玉にな
って悲鳴を上げていた。

「松尾さん、やっぱりミタチ電機は1500円で手仕舞っておけば
よかったでしょうが」

私は勝ち誇ったように遠慮なく言った。彼の資産がそんなに傷つい
ているとは知らなかった。と言うのも、ミタチ電機に投資したお金
はやられても、松尾さんはメルテックスで儲けたお金を丸々別の所
に残している、と私は思い込んでいたのだ。

ところが、彼は、やられたミタチ電機の株券のほかには現金を残し
ていなかった。メルテックスで儲けたお金は、
クラブ通いで遊びまくって浪費していたのと、複数の女に貸しこんでいて、
みな焦げ付いていた。

最初私と行った店のNO1で、松尾さんが一番気に入っていた細身
の女には貸しも貸したり、4千万円も貸していた。他にも1000
万円以上貸した女が何人もいた。ミタチ電機でやられた松尾さんは
挽回のため次の勝負をやろうとして、女たち貸したお金の返済を求
めた。

だが電話をしても居留守を使われる、会いに出向いても会っ
てくれない、といった有様。金の切れ目が縁の切れ目とはよく言っ
たものだ。相場でやられて尾羽打ち枯らした松尾さんから女たちは
蜘蛛の子を散らすように逃げ出していった。

ストーカーみたいに女の帰りを待ち、「頼む、俺のゼニを返してくれ~~」と
アパートの前でわめいていた松尾さんは、返済要求がクド過ぎることを理由に
逆に女が関係するヤクザに脅かされて慰謝料を払わされる羽目になっていた。
こうなるともう悲劇を通り越して、喜劇と言わざるをえないだろう。

           このあとすぐ第8章 最終章に続く

  • [1]
  • 第8章 最終章 投稿者:草笛  投稿日: 6月 9日(木)22時48分52秒

  • 投稿者:@楽
  • 投稿日:2013年 6月29日(土)23時10分7秒
 
なんのことはない。松尾さんは株式投資を本格的にやったがゆえに、
もともと持っていたかなりの預金・保険を大幅に減らしてしまって
いた。株などやらず、ケチをしながら地味に暮らし、預金はそのま
まにしていたほうが宝屋の財産保全のためには、ずっとよかったの
だ。

悲惨なバブル崩壊で、草笛後援会米子支部は自然消滅し、松尾さん
と会うこともなくなった。松尾さんは「幸い、ミタチ電機には5円
の配当があるから、財産として保有するがね。配当は老後の年金代
わりだわナ」と最後まで強がりを言っていたが、ミタチ電機はその
後、赤字無配転落となり、まもなく、あっさり倒産した・・・・

ミタチ電機倒産の報道に接し、松尾さんがあまりにも可哀そうに思
えて、宝屋の店を見舞いがてら訪ねて見た。店にはお客もなく閑散
としていた。松尾さんは女たちからゼニをたかられたうえに裏切ら
れ、さらにトドメを刺すようにミタチ電機倒産で保有する株券は紙
切れになり、人生に絶望して昼間から布団をかぶって寝込んでいた。
相場というものは、なんとむごいものなのだろう。

しかし、一度きりの人生だ。男に生まれて、一時的とは言え、美人
にもててスター扱いされ、いい夢を見たんだ。
やっぱ株のおかげだよ、夢を見ただけでも増し儲けだったんだよ、
と、私は心の中でつぶやいて、寝込んで起き上がれないでいる彼に
黙祷、合掌礼拝して風のように立ち去った。

ふと見上げた米子の空は抜けるように青かった。私はなんにも悲しくはなかった。


この物語はフィクションであり、登場人物、店名はみな架空です。
もしも登場人物が誰かに似ていたとしても、その人とは一切関係ありません。


         株研掲示板創立4周年記念モード「たかられ屋物語」 完